心の荒野。私は内省的にならざる得なかった。「荒野に叫ぶ声がする」と予言者は予言した。私の心の荒野はいつもその叫びとその
後に来る福音の予感を待っていた。思えば厳しい荒野は色々な人々をその厳しさゆえに生み出した モーゼ、イエス、モハメット。
孤独という精神の砂漠は何も生み出さない物ではなく砂漠だからこそ大いなる何ものかを生み出すのかもしれない。しかし、私にと
っての孤独感は創造への出発ではなくただの寂しさその物それだけであった。でも、私にはたった一つの救いの妹がいた。私は妹が
いることで大好きな母や家族のいない孤独感をまぎらはせた。妹に能管を吹いてやったり絵を書いてやったり、外で遊んだりした。
経済的には益々、苦しくなったが妹といるとそんないじましさを全て忘れた。あるとき石を投げられて、いじめられていた妹をか
ばって額に石があたり真っ赤な血が流れた。私は妹の為だと思うとなんとも思はなかった。
月日は流れ姉は中学を出ると貧しさゆえにすぐ働き兄も同じだった。私は家族に高校へ行け、と言はれたが兄と姉が可愛そうでそ
んな気持ちになれなかったし加えて勉強も嫌いで全科目が最低のこともあったので高校へ行かないのは私にとっては丁度よい事だっ
た。
しかし妹の出来は良かったので、そのせいではなかろうが、とにかく私は働く事にした。就職口はなかなか無かったが運良く先に
話した近所の広い病院の雑用係りに就職出来た。しかし妹は家族全員で高校に行かせることにに決めていた。 妹は女性らしく美し
く成って行くのが日増しに解った。偶然に出くはしたように女性の生理用品を妹の衣類のそばで見たり、妹の白い下着に妙にすっき
りとしない切ない、いらだちのような興奮を感じた。
ところで妹が高校へ行く時分の家族の体格は兄は182センチ、77キロ、姉は、162センチ、45キロ、私は175セン
チ、68キロ、妹は167セン50キロ、最後に母は160センチ、60キロで、兄、姉、妹、母は中肉中背、私は、やや小柄で
あり家族は平均的日本人の体格であったが、特に妹の身体の比例は日本人離れして整っていた。父も母も顔立ちは並以上であったが
両親の形質を受け継いで私以外の家族の顔立ちは良いようだ。
私は、しかし全く平凡で否むしろ少しの劣等感さえ持っていた。しかし妹はその家族の中でも身体、顔立ちなどは飛び抜けていた
。濃く太い眉、憧景的な黒く優しく光沢に照り満ちた、筋の通った整然とした鼻、弾力があって口元が端正で品良く表情のある唇、
顔立ちの全体の味わいはそこはかとなく異国情緒を漂わせ、そして大理石の様な抜けるような白い肌、長く漆黒の艶のある清らかな
髪、とても高校生とは信じられない美しさだった。
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