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自分の容姿の平凡さに飽きた私は妹が自慢だった。しかし、無邪気な妹は「お前、将来、何になりたいの?」と、私が聞くと。決

まって、「お兄ちゃんのお嫁さんになるの」と子供時からの口癖を繰り返すばかりで、それが私に妹への愛着をさらに深めさせた。

 ある時、気紛れに有給で病院を休んだ。しかし、朝から仕事が詰まっていたので仕方無く2時頃まで仕事をして帰った。休む事の

少なかった私は、なぜかひどく機嫌良く帰りに洋品屋によって妹にハンカチでも買ってやろうと思った。洋品屋の親父さんは私に愛

らしい桜の花びらのハンカチを勧めた。それを買って急いで家に帰った。

 初夏の蒸し暑い季節にアパートのドアの取っ手を何気なく回すと不用心にも鍵は掛かっていなかった。「しょうがないな」と心で

言いつつ見ると玄関に妹の靴がきちんと申し訳なさそうに揃えてあった。

 すぐ隣の室には妹はいない私は茶目気を出して土産を持ちながら妹を脅かしてやろうと思って、そっと忍び足で家の中に入って行

った。二つしかない室の襖をどっ、と開けた。

そこに暑さのせいか学校の体育で汗まみれになったため着替えるためか全裸になっている妹がいた。私は一瞬の空白の内に強烈に成

熟した女の眩しいばかりの肢体を脳髄の写真機に焼き付けてしまった。2人は、ただ呆然として立ち尽くしていたが、我を取り戻し

て私は「すまない、まさか着替えているとわ思わなかった」と、言い、直ぐ妹に背を向け後ろ向きの手で焦って襖を閉めようとした

後ろ向きなので、うまく閉まらない、そこへ閉めることを手助けしようとする妹の手が触れた。その点の接触は僅かな僅かな触れ合

いであったが計り知れない性愛の入口を覗かせているようであった。

 襖を閉め終わり私は天井に焦点が合っていた。「今日、暑いから着替えていたの、御免ね」と妹は言った。「お前に、お土産を買

って来たんだ、この襖のそばに置いておくぞ、ちょっと、ぶらぶらしてくる」と言って家を小走りで出た。私は深層に在る雄の苛立

つ様な、どろどろした熱い溶岩の様な情欲をなだめる事が出来ないのが歯痒かった。しかし、妖艶なくっききりと現れる妹の妖しい

肉付きの残像は清らかで激しい滝の激水でも洗うことの出来ないように、べっとりと、しかも子供が水飴を手放すぬように甘味な官

能として心に張り付いてしまった。

 「(きら)びやかに」私の妹はこの胸のアルバムにその様に刻まれたのだった。その夜は悶々として寝付かれなかった。蒸し暑さ

も手伝ったが顔の上からスライドを使って幻灯機で妹裸体を映されているように脳裏から煌かで肉感溢れる体の影が払っても払って

も追ってきた。もうとっくに眠っている家族の寝息とは裏腹に、どんどん目がすっきりと

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