哀れなる魂 破の段 第2部 或る無名戦士の記録 |
女は俺の知っている女だ。俺が東京にいた時、新宿2丁目で俺の相手をした女に違い無い。この前、チラッ 朝鮮の女は俺を手招きして慰安所の片隅にある部屋に案内した。扉を明けると女は僅か50燭の薄暗い電 女もやはり俺に気付いた。布団の上に座りながら、くるっ、と俺に背を向けた。その僅かの間に彼女は、 「帰って後生だから……私が誰だか貴方には分かっている筈よ。貴方は忘れたかもしれないけど、こんな |
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イメージ画像は映画、兵隊やくざの女性(淡路恵子)役組織の実体は行ったことが無いので私には不明です。しかし噂ではその実体は非人間的と聞いたことも有り恐らく歴史の暗部だと筆者は思う。悲劇としてとらえて物語を展開しました。違う解釈も勿論存在します。 | ||
2人きりになった部屋で女は続けた。「聞きたく無くたって聞かせるわ」と女は俺の方を向いた。その女 何という運命これが俺と薫との残酷な再会だった。薫はまた苦しそうに喋った。「初めは、もう少し良い 薫はいきなり俺に抱き着いた。病人にまして女に、どうしてこんな力が有るのか不思議に思える程に強く 俺は黙って薫の体を抱いてやった。何時までも、何時までも、何時までも、ただ黙って静かに抱いてやるつ すると薫はその思い出を止めて沈黙を破る様に「そこの柳行利を取って」と言った。言われた通り薫の寝 「薫ちゃん」「なあに」「薫って良い名前だね」「どうして?」「だって凄く文学的、詩的名前だ。伊豆の しかし或る時、赤坂區霊南坂町か葵町に有った大蔵集古館を1人で見に行った時の事。ここには美しい普 また、その光景が今、見て来たばかりの普賢菩薩の神秘的な雰囲気と重なってか薄暗い館内は、その会を |
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