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女は、にっこり、として笑って「良いわ殺しなさい、私が死ぬ事で私の力を示しましょう」と女は言った。「明日3月3日雛祭りに

、新宿の高層ビルの前の陸橋の、高層ビルよりの所で、中央公園の方の歩道の所で待っていてくれ時間は午後の3時、もし貴方が普

通の女で本当に死んでしまう、ただの人なら俺も後を追って死ぬ必ず、お前は私の命、しかし、芝居の幕は降さなくっちや」と

私は言った。女は「明日、芝居の終幕を下ろしましょう。私は貴方が多分、想像している女よ、でも、ちょっとは違うかもしれない

、この不可思議な芝居の終幕を明日2人で下ろしましょう」 私は麻酔薬の瓶を出し瓶を逆様にしてゴムキャップに注射針を差し注

射器のピストンを下げた。気圧でピストンが戻るのを力を入れて下げ50m全て注射器に満たした。 女は抵抗をしない、私は、顔を

歪めグサリと針を差しピストンを、ぐいっ、ぐいっと押すと押すぐいっ、ぐいっと力が抜け物体の様にグラッと女の体が私の体に持

たれ掛かった。

 「人を殺してしまった。許してくれ明日、会おう、俺は、お前に殺されてもいい、でも、お前が本当はどこの誰なのか知りたい、

明日待っている今日の償いは明日、必ず、私自信でやる」と女に語った。 私は、女の亡骸を近所の山中へ、わざと人目に着く様に

置いた。トランクに入れておいた寝具で大切な女の体を丁寧に包み、枕に頭を乗せ女の今わの際を見て立ち去った。

 そして歌う。 「足引の山の夜道を一人行く、心詫びしき今は際なき」と素朴極まりない歌を歌った。

「桜の神話 第4部」

その日3月3日、私には一抹の不安があった。朝刊には殺人事件は載っていない。休みの土曜、私はいっもの通り起きた。姉は「

今夜、お前の好きな海苔巻を作って上げるよ、あの日、お母さんが作ったみたいに、だから夕食は家で食べるんだよ」と言った。会

社に行こうとする兄にも姉は同じことを言った。

 兄は「月曜から車もういいんだろう?」私は「今日だけ頼む友達との前々からの約束なんだ」と答えた。2人は会社へ行った。2

人を見る、これが最後の姿だろうと私は悲しくなった。「母の命日か明日は」あれは亡くなる少し前私は「お母さん、梅と桜と、ど

っぢ好き?」と聞くと「さあ」と答えない。私は「今度、桜の名所へ必ず連れていって上げるよ」と行って先の質問の答えを無

理に聞こうとはしなかった。

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