と女から誘いがあった。私はもちろん行く、と返事をした。 その日馬鹿の一つ覚えの濃紺の三っ揃えを着て体を清潔にして、浮き浮き出掛けた。2人は1日鎌倉で遊んだ。楽しい1日は、た 私は、「そうだ観音堂にせっかく来たのだから観世音菩薩にお祈りをしましょう」と私は賽銭を2人分、2回入れて祈った。眼を 女を見ると女は顔を真っ直ぐにして眼をつむって祈っていた。私と同じ濃紺の背広を来た端正な姿からは、創造もつかない苦しみ 私は「何を、そんなに熱心にお祈りしていたのですか?」と聞くと。「秘密」と言ったが直ぐ「いえ、私は愛する永遠の恋人のこと 私はこの女の愛する人が羨ましかった。しかし、同時に、信じられない、この女と会った偶然が、という気持ちが吹き出していた 用に。失踪した女が騙してここに、いや、もしかしたら死んだはずの………そんな馬鹿な」と思った。 女は言った。「鎌倉の会席料理屋で食事をしましょう」と、私は「ええ」と答えた。1日は楽しかったが食事を終え別れる時が来 家に帰ると兄は、「どうだ、お前、車の免許でも取れよ」と言った。「有ると便利だぞ、俺が今乗ってる車で教えてやるからよ、 |
||
前頁−28−次頁 | ||
目次へ戻る |