例によって病院を休み、体を清潔にし、きちんと濃紺の三っ揃えを着て絵を持って吉祥寺の画材屋に出掛けた。絵は、今日1日で 後はこの絵の額を買って飾り、ガス自殺をするつもりだった。いや絵など出来なくても今日、死ぬつもりだった。 額を買って店を出ようとする時、聞き取れぬ程、小声で「この絵を書いたら死んじまうよ妹よ」と言って店を出ようとする瞬間「 私は女の背中に、「おい、お前どこへ行っていた?探したぞ!」振り向き様に女は「え………」と言って、きょとんとしながら私を 「貴方、失礼ですけど、どなた?」「とぼけるな」「そう言われても知りません」女は自分の名前を言った。 「失礼しました」私は、まだ信じられなかったが、言葉を続けた。「この絵を見て下さい」女は「あっ、私が赤ちゃんを抱いている 「結婚しているんですか?」「ええ」「もしモデルになってくれる決心がついたら、ここへ電話して下さい」と、私は名前と自宅 皆、珍ずらしがって見るかも知れないけど、貴方はこの近所の人でしょ?」「ええ井の頭公園のそばです」と女は言った。「では気 私は急に今までの心を蔽っていた雲が嘘の様に晴れるのを感じた。気の持ち方だろうか死の決心は消え、その日から母、妹、失踪 しかし、あれから2週間程後の夜、私に女からの電話、「今度の日曜日、鎌倉の美術館に展覧会を見にいきません?」 |
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