腹に注射をぶち込んで殺した。静脈注射でないので犬は直ぐ死なない。やがては、よろよろと意識を失うのだ。 犬の解剖のための血抜き。鎖骨の無い犬の上腕を切り動脈を切る、その血を蛇口に着けた。シャワーを流すと流しは一面、真っ赤 俺も神様からぶっ殺されても何も言えないな、と独り言を行った。仕事のせいか私の心は地獄の入り口に居るように思えた。 「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」あの浄土真宗の開祖の言葉が暗く激しく耳元で炸裂したような気がした。 女が居なくなってから酒は止めていた。しかし、仕事の面白くない私は、また酒を呷る様になっていた。真夜中、目が醒めると恨め 朝、体は鉛の様に重い、家族には何も言わなかったが私は最近プイと病院を休むようになっていた。どうせ止めようと思っていた。 肉親をもがれた寂しさ妹を死に追いやった罪悪感、女の失踪、仕事の変化、失踪した女を愛していたが、精神に足枷を嵌められた 「俺は虫螻、妹殺し、強姦野朗、犬殺し、ああ地獄落ち」津波の様に度重なる泥流に埋まった死体の様に私は深い深い地の底に希 生きる糧を全く見出だせない暗黒の生命力はやすやすと病魔に魅入られた。僅かな風邪は高熱となり大量の薬も無駄。逆に副作用 私は魂の抜けた生きる屍の様だ。死の強迫観念に取り付かれる様になり心は、いつも死神と対話する様になって行 |
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