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新宿の小田急の横の安い飯屋が並ぶ界隈まで行き、直ぐ飯を食べ、同じ界隈の酒場で飲み直した。そして歌舞伎町の方に行ってエロ

映画で時間を潰した。なんだかんだ時間を潰し時計を見ると10時45分、そろそろだな店が引ける頃は。急いで花園町の店の付近

まで駆けて行った。店から少し離れた路地で、店を伺うように見ると数人の男が女を待っていた。女達が出て来ると在る物は客と寄

り添って行った。

 「あ、あの女」私には、その女が直ぐ解った。女は中年の、女より背の低い男に頻りに誘われているようで女は断り行こうとして

いたが、突然、「なによ煩いわね」と大声で女が叫び、猛烈に走り出した。男も追い掛けるつもりのように少し走ったが諦めてしま

った。

 女は大層な勢いで歌舞伎町へ走り、新大久保に抜けるラブホテル街の一本道を抜けて行った。私は一本道なので感ずかれる事は解

っていたが、後ろを着けた。

 雨が、ぽつり、ぽつりと髪をこずく上着を頭から、すっぽり掛け雨を凌ぐ。女は傘をさし、さらに歩いて新大久保百人町、そして

アパートへと着いた。

 雨は酷いふりではないが勢いを増し私の体は僅かに濡れていた。女は私に感ずいていた。直ぐ階段を昇り鍵を焦って開こうとして

いた。私は黙って、それを見て、女が室に入るのを見届けた。私は階段を昇り扉をノックして。「話が在るんだ入れてくれ」と言い

「誰?」と言うと「雨で困っているんだ、さっき貴方を妹と間違えた男だ」と雨宿りの歌を読む。

「世の中を厭ふ迄こそ難からめ、仮の宿りを惜しむ君かな」女の名は知らぬが、あえて「たかこ」頼むと言うと、女は直ぐ「世を厭ふ

とし聞けば仮の宿に、心、止むなと思うばかりぞ」と返歌されたが、扉が開く様子はな
い。

 私は、やっぱりと思ってがっかりとして、その場に座り込んだが鍵の音と共に扉が開いて。「少しの時間だったらどうぞ」と女は

入れてくれた。

 私は戸を閉めて、「頼む俺と結婚してくれ」と言うと「どうして?」と女が言うので、今までの一部始終を正直に話した。

 すると女は「あんたも、あんたなら妹も、妹ね」と言った。私は明らかに血が上気するのを感じ逆上した。「俺の悪口は、いいが

妹の悪口を言う奴は、皆、殺してやる、いや、お前は強姦して殺してやる」いきなり女を思い切り

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