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親孝行も出来ず妹を殺し、幸せに出来なかった。妹は、私が誘惑しなければ密通など、しなかったし死なずに済んだ。私は妹を抱き

上げ室の中へ移した。可憐な顔にアルカイックスマイルさえ湛える様な顔だった。

 頬に紅の薔薇が仄かに仄かに咲いたように血行を感じそのことが、さらに私に済まないという気持ちを起こさせ涙で歌った。

「頬から唇から馨しい薔薇の香りと微笑みを湛える女、美青年アドニスの死を悼む女神アフロディティの涙から薔薇が咲いたように

、私の涙の全てを薔薇に変えて天国に行く道を棘のある、この花で一杯にして邪魔してあげる。命の糸を手繰り寄せてやる、太陽が

必ず昇るように、春を忘れず全ての緑が燃えるように我が命の源の女、絶え絶えの私の息を吹き帰して薔薇の乙女よ」と言って、妹

の胸に縋り付いた。

 そして、ふらっと立ち上がると、台所に行って虚ろに包丁を取って両手で腹に突き刺さうとする瞬間、近所の男が2人、3人、腕

を取って止めようとするが気違いの様になった私は、死ぬことを諦めず包丁を信じられない力で突き刺そうと努力を止めない。

 「君が死んだら姉さんも死ぬぞ!」と誰かが言うと、急に力が抜けた。放心状態だった。

「待ってくれ、直ぐ行くから、兄姉の心が落ち着いたら直ぐ行く」と心の中で呟く。「おい、しっかりしろ」と私の放心状態を心配

して顔を近所の人達はぴちぴち、と軽く叩いた。やがて、知らせを聞いて兄と姉が駆け付けて激しく悲しんだ。

 「なぜ死んだの?」と姉、「どうしてだ?」と兄。私との密通の事など言えない。「俺も死ぬ」と独り言の様に呟くと、「馬鹿野

朗!」と、
突然、兄が平手打ちを私に食らわせた。

「お前まで死んだらどうなるのよ」と姉は、私を抱き締めた。 私は暫く生きる屍の様になるしかないのか、外へ出ると、もう夜空

、天の川に織姫と牽牛が見える。「浪漫の女だ7月7日に生まれ7月7日に死ぬなんて、それも恋のために」と心で呟いた。もうな

く気力さえ残っていない。あの睦言を妹がいるつもりで囁いた。

 「天に在りては願わくは比翼の鳥となり、地に在りては願わくは連理の枝と為らん」私は親戚にも葬儀屋にも警察にも、これから

連絡する所だった。あまりの動揺に兄姉に知らせるのが精一杯だった。

 ただ医者だけには来てもらって死の確認は、して貰っていた。でも先生にも警察への連絡は1、2時間待ってと

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