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池坊専応 口伝<巻頭部分> 天文十四年池坊専栄相伝本 ※最初の二字(瓶に)欠損 |
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池坊専応 口伝<巻頭部分>原文 |
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瓶に花をさす事 故より有とハ聞待れど それハ美花をのみ賞して 草木の風興をもわきまへす たゝさし生たる斗也 此の一流は野辺水辺をのつからなる姿を居上にあらはし 花葉をかさりよろしき面影をもとゝし 先祖さし始しより 一道世にひろまりて 都鄙のもてあそひとなる也 破瓦に古枝を捨て 是に向ゐてつらつらおもへハ 廬山湘湖の風景も いたらされハ望みかたく 瓊樹瑤池の絶境も みゝにふれて見る事稀也 王摩詰が輞川の図も 夏涼を生する事あたはす 舜挙か草花の軸も 秋香を発する事なし 又庭前に山をつくり垣内に泉を引も人力をわつらはさすして成事をえす たゝ小水尽樹を以て江山数程の勝概をあらはし 暫時頃剋の間に 千変万化の佳興をもよほす 宛仙家の妙術共いつべし 十符に我居ても 見あかぬ床のたのしみは 誠に安養の宝樹宝池も 去此不遠にして 花蔵世界に吹風も 瓶のうえにそ匂い来る 凡 仏も始頓の華厳といふより 一実の法花にいたるまで 花を縁とせり 青黄赤白黒の色 五根五躰にあらすや 冬は郡卉凋落するも 盛者必衰の事はりをしめし 其中にしも色かへぬ松や檜原ハ わのつから真如不変をあらはせり 世尊拈華をみて 迦葉微笑せられし時 正法眼蔵涅槃妙心の法門 教え外に別に伝て 摩迦大迦葉に附属す とハ の給ひしか 霊雲ハ桃花を見 山谷ハ木犀を聞 皆一花の上にして開悟の益をえしそかし 抑是をもてあそふむ人 草木を見て心をのへ 春秋の哀を思ゐ一旦の興を催のみにあらす 飛花落葉の風の前に かゝるさとりの種を うる事もや待らむ
※上の文章を川端康成先生がノーベル賞講演の美しい日本の私その序説で文章引用をして有名です。09/3/28変更 |
右は文阿弥花伝書<部分>京都・鹿王院で内容は専応口伝と並び有名な仙伝書中「奥輝之別書」と同様で中央に香炉、向かって左に花瓶、右に鶴亀の燭台の飾り三具足と言います。掛け軸は三枚が一セット真ん中が本尊左右には山水図が画かれ三幅一対のの中央の掛け軸の前に三具足が置かれます。 |
池坊専応 口伝<巻頭部分>口語訳 (翻訳者 原田俊介)(拈華微笑の影響例の例文、終の方の太字に引用) |
花瓶に花をさす事は昔からよく有る事は聞いていましたが、それは美しい花のみ鑑賞し草木などの趣を理解せずただ差して生えてるだけです。この池坊の流派は野に咲き水辺での自然の姿を花瓶の上に表わし花や葉を飾りよりよい面影をもととし先祖 <小野妹子> から差さし始てから、この華道は世の中に広まって平安京その周囲の人々の楽しみに成りました。破れた花瓶に古枝を集めこの花瓶に向ってよくよく思案すると廬山湘湖 <廬山は中国の名山、湘湖は瀟湘と洞庭湖と解釈根拠の文はこれと思います。行けない所の譬え> の風景もそこに行かなければそれを楽しむ事は望めないし瓊樹瑤池(けいじゅようち) <中国の架空の遺跡、瓊樹は崑崙山の西の玉のなる木と瑤池は崑崙山にある池、出来ない相談の譬え> も行って来た人の話を聞く事は極めて稀な事、出来ない相談です。王摩詰 <王維、中国の唐の全盛期を盛唐と言い其の時の詩人で本名は王維、仏教の志が強くヴィマラキュルティー維摩詰が登場する維摩経から摩詰を名乗る> の輞川の図 <彼は画家でもあります> も夏に涼を生じませんし舜挙 <元代の文人画家> の草花の掛軸も秋の枯葉の香りを生みません。また庭に築山を築き垣内に泉を引いても労力を多く使いそんな大変な事は出来ません。ただ少々の水と樹で深山幽谷の数里の道の趣を表し短時間に千変万化の佳い趣を催します。それはあたかも仙人の不思議な術とも言えましょう 十符のすかこも <顕昭の袖中抄に陸奥の、とうのすがくも七符には君を寝させて三符に我寝るむ意味はこもの7割にお前を寝かせて残りの3割に私が寝る)の意味からの引用と思います> のあとの7符に花瓶を置いて後の3符に私が居ても見て飽きない床の生け花の楽しみは誠に安養 <生前の行いで分けられる9の浄土、9品安養界の事、要は極楽と思います> の宝樹宝池 <極楽の風景> も去此不遠 <浄土三部経、観無量寿経の一節ここより遠からず> 遠くでは無い花蔵世界 <蓮華蔵世界の事だと思います> に吹く風も瓶の上に匂い来ます。 だいたい仏陀も始は頓教 <いきなり一番深い教えを説く事、段々易しい教えから難しい教えは漸教と言います> の華厳経と一実の法華経 <経典妙法蓮華経、比喩品紹介> に到るまで花を縁としています。青黄赤白黒の色 五根五躰を表し冬は色々な草花か枯れるのは盛える者は必ず衰えるの諸行無常の事を示しその草木の中にも色が変わらぬ松や檜木は自然と真理は真如、不変を表しているのでしょう仏陀は花を見て弟子の迦葉に微笑だ時 正法眼蔵涅槃妙心 <仏陀が悟った肝心な心得と煩悩を吹き消した妙なる心> の法門、仏典ではない教かたで <禅の教え方> で摩可大迦葉に付属すると言ったのは霊雲 <中国の唐代の僧> で桃の花を見て山谷 <北宋の黄庭堅> は木犀の香りを聞く <香を聞くと表現聞香の世界参照> 皆1つの花の上に悟りを開く利益を得ました。 そもそもこの芸術で楽しむ人は草木を見て心は自ら春と秋の哀を思い一旦の趣を催すだけでなく飛花落葉の風の前にこの様な悟りの種を植る事なのです。
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※間違い多く記憶だけで急ぎ書いたので御注意下さい。大意は合っていると思います。訳して解りましたが専応の深い教養には驚くばかりで無教養な私はやっと思い出しながら書きました。花の魅力、素晴らしさを余すことなく表した名文中の名文、花は素晴らしい芸術も理解しました。口語訳の本はブックサーチ 古典日本文学全集口語訳はこれだけです。現品は見てません有名出版社で翻訳間違なしでしょう初からこれ見りゃ良かったです。後悔、池坊専応は字クリックすると紹介リンク僧侶です。池坊専応口伝の全文は塙保己一が編纂した群書類従の中に収められおり現在は八木書店で購入出来ます。具体的には続群書類従19下 遊戯部 飲食部か天理図書館善本和書之部72 古道集 解題 熊倉功夫 (※影印本)です。仙伝抄は群書類従 19管弦部 蹴鞠部 鷹部 遊戯部 飲食部に収納。 10/4/29口語訳と原本画像追加 |
いけばな成立期の花伝書並びに関連書一覧
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