| 世尊拈華 |
| 世尊昔霊山会上に花を拈じて衆に示す。是の時衆皆黙然たり惟だ迦葉尊者のみ破顔微笑す世尊云く吾に正法眼蔵涅槃妙心実相無相微妙の法門有り不立文字教外別伝摩訶迦葉に附属す。 無門曰く黄面の瞿曇傍若無人良を壓て賎と為す羊頭を懸け狗肉を売る将に謂えり多少奇特と只当時大衆都て正法眼蔵作麼生か伝えん設し迦葉笑はざらしめば正法眼蔵また作麼生か伝ん若し正法眼蔵に伝授有りと黄面の老子閭閻を誑謼かす若し伝授無しと云ば甚麼と為すか独り迦葉を許す。 |
| 口語訳 |
世尊は昔し霊山の説法会の時に大梵天王から献上された花を拈って大衆に示した。しかし是の時、皆は黙まってポカンとしていた。ただ大迦葉尊者のみニャっと笑った。すると仏は「私に正法眼蔵涅槃妙心実相無相微妙の別伝不立文字教外別伝が有るこれを摩訶迦葉に附属する事にしようしよう」と言われた。
無門和尚は言った。(黄面の瞿曇、仏様)は大層、傍若無人で良く貶めて(かえって)賎しめた。羊の肉を懸け犬の肉を売る(看板に偽り有り。だぜ)御大層な奇特が有りそうに言ったもんだよ、もしこの時に皆がゲラゲラ笑ったら正法眼蔵は誰に伝えたんだ。迦葉が其ん時ニャと微笑んだから良かったよ、もし迦葉が只一人おあつらいむきにニャと笑わてくれたので良かった。笑わなかったらどうする積りだったんだ。若しも正法眼蔵を伝授すべき物が有ると言うのなら(黄面の老子、仏様)は閭閻(素朴な人)を誑謼(騙す)のかい。若し何かを伝授する事が無いと言うならば何故に独り迦葉を附属するなんて言たんだ。 |
| 頌曰く |
| 花を拈起し来りて 尾巴已に露る 迦葉破顔 人天借ることを罔し |
| 頌の口語訳 |
| (仏様が)花を拈じてた。尾が露われている 迦葉がニャとした 人でも天に住む天人でもどうしようもない。 |
