人間の食事になり犠牲になった動物や、また何も言わず日夜働いている心臓ちゃんが仮にたとするとこう言うかもしれない。「人間様、俺達を食ってそれに見合う意味のある価値の物を作ってくれたのでしょうね?また心臓は僕は毎日何も言わず一生懸命血液を体に運んでいます、御主人さま、その労働に見合う意味ある価値の物を作ってくれたのでしょうね?」と。
 しかし、中には全くこの答えに絶えられない享楽一辺倒の人も居るのではないだろうかまた確かに閃きは重要な物です。しかし、天才の発見した真理は間違いなく或る犠牲の上に生命を維持しても、それに見合う意味のある付加価値を作ったのです。だから単なる家がいかにそれは単なる釣り竿の話と同じだ、天才が発見した真理発明、芸術的創造は、その重要性が違うのです。
 だが、これだけでは天才のあの気違い染みた独創的創造力を説明出来ない。それは何故か?それをこれから説明しよう。一言で言うならば、それは天才の人生に起こった色々な困難、言葉を変えて言えば制限が天才を作ったのです。
 人は言う「馬鹿な!あれ程、独創的創造力を成し遂げた天才は恵まれていて人生に制限など無かったのでは?」しかし人はこう言いながらも直感で知っている。天才に恐ろしいくらい不幸な人が多いのを、これから、それ等が天才の創造力にどの様な影響を与えたかを例を挙げて説明して参りましょう。
 自分自身を表現すると言う事は僅か1〜2分の間に自分を表現するスピーチと同じです。スピーチは合衆国では自分を表現する教育手段として、スピーチと最終的に演劇を重んじていると言ます。
 僅か1〜2分で自分を表現など出来るものか!と言う人も居る。しかし、本当にそうだろうか?それは違う、短さの中で12分に自分を表現している人々は幾らでも居ると思う。 CMは1分です、天才詩人、、杜甫、李白の律詩は8行、絶句に至っては起句、承句、転句、結句の4行で無限の世界感を感じさせます。
 1〜2分は表現の制限だ、しかし、この制限と言う事は実はとても大切なのです。
「1日3分で何も出来ない人は結局1日3時間やっても何も出来ない人だ」とゲーテは、そんな事を言ったらしい。またナポレオンは「仕事を頼むなら、むしろ忙しい人に頼め」と言ったらしい。忙しいのに立派に仕事をこなす人は短い時間の制限を破り有効に時間を使う事を知っている人だとナポレオンは思ったのでしょう。
 天才と言う人々は人生と言う宇宙の無限の時間に比べたら短い時間の中で、その制限を打ち破って、颯爽と自己を表現した人々なのです。
 丁度、蒸気に高い圧力をかけて沸かし、それを表に出すと大きなエネルギーを持って吹き出すのと同じ様に天才は、短命、貧しさ、無理解、などを逆に利用し創造のエネルギーに向けた人々と言えます。
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基督も釈迦も死と言う制限を真に逃げる事無く考え抜いたからこそ、あれだけ偉大な 宗教を完成させたのでしょう。 フレミングがペニシリンを発見した時、この薬には、あらゆる制限があった筈です。そんな薬は夢だと制限を主張した筈だ。卑しくも科学も創造であり芸術的であり制限を打ち破る自己の表現です。わたくし達は前記の制限に逃げなかった天才の態度を見習うべきだと思います。 また人生での先天的制限と先天的制限では無いが大切な制限である性愛の欲求不満が生む創造的精神力を男女の愛で説明しよう。痩せ女に筋骨逞しい男、ふくよか女に痩せ男、甘ったれ男に年上女、責任感の強い指導者型の男に甘ったれ女、良家の令嬢に無知な純粋男、お坊っちゃまは水商売風の女。男女の組み合わせは不思議だ、まるで違う立場の異性が、まるで雰囲気の違う異性が遂に一生一緒に居ると言う馬鹿な事が起こる。何故か?それは人は無い物ねだりをし手に入らない物ほど強い執着と憧れ持ち入らないと強い劣等感を持つ物だからです。 ところで豊臣秀吉は下賎の出身で、権力者になると多くの側室を持ち、それは皆、高貴な女性だった。現代に家柄の良い異性に憧れる人は皆無だろう、人によっては有産階級や貴族は貧しい人から搾取をすると毛嫌う人さえ居る。しかし秀吉の生きた時代はそうでは無い、下賤な男は高貴な女を決して愛せず口を聞く事さえ出来ない。 多分下賤の男には高貴な女性はこう見えた筈だ。幼時から厳しい体罰を以て訓練された行儀、教養、言葉使い、生活の雑事のない身を日に更さず色は白く化粧や衣服よって飾る事によって生まれる庶民の女性に無い美だと。それを見た下賤の秀吉に、あんな女を愛したい、愛したいと言う砂漠で喉が乾いた人が清い水を大量に欲する感情にも似た高貴な女性への渇望を彼の心に生じさせた。だが若い時、彼は遂にこの望みを果たせない、そして権力を握ると普通の男性では考えない高貴な女性漁りを、まるでかれた様に始める。また彼は下賤の出身故に“つまらない血統”がどうしても欲しかった。彼は封建時代の犠牲者で可愛そうな人なのかもしれません。

 また彼は権力に物を言わせ金の茶室を作る。わたくし達、庶民が権力をもし持てたら望む事は宮内庁にお願いして桂離宮を家族と自由に散歩したい、美術館にお願いして光悦の茶碗で茶を飲みたいぐらいが望みだろう、唐の太宗でも王羲之の書だけを望んだ事を見ても分かる様に。秀吉は若い時、酷く虐げられ、その反動が権力を持つと一辺にに爆発し成金趣味になった。これを見ても分かる様に一部の天才に与えられた先天的とも言える人生の制限や、満たされない性愛の欲求は天才に強い劣等意識とその代償としての創造を要求します。痩せ女は太い彼氏と結婚すれば劣等感も性愛の欲求も解決する時もある。これと同様“先天的欲求不満や劣等感や満たされない性愛の欲求を天才は創造する事によりに代償し満足した”ナポレオンの背が高かったら彼は皇帝にはなれなかったかもしれないと言っても誰も不思議がらないだろう。後にも延べるが天才は故意に作れない、第2のバイロン卿を作るのにわざと足を骨折させる事は出来無いからです。

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