哀れなる魂 破の段 第5部 東京五輪の日に |
持っていたが、それでも生活は苦しかった。にも関わらずその金を出そうともせず智恵子を働かせたからだ 智恵子はしかし良い妻であった。智恵子は俺に職さえ探して来てくれた。俺は智恵子が職を探して来てく また変な恥の心を持っていて、こう思うのだった。「もし建設会社の資材置き場で働いている所を昔の俺の それに俺はもうアルコール中毒だった。確か川柳にこんなのがあった。「酒の無い国に行きたや二日酔い そして昔の様に演劇や音楽や文学や絵画の様な話はしなくなり、専ら酒を飲んでは例によって下らない冗 それだけなら良い俺は智恵子や息子に暴力を奮った。或る時に、もう青年になった智恵子の弟が俺に無断 俺は智恵子をたったそれだけの理由でひっぱたいた。智恵子は発作的に家を飛び出して弟の居る実家に帰っ |
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アメリカ映画ディアハンターのロシアンルーレット、傷ついた心は人に自虐への道へ追い込むのでしょうか | ||
俺は嫌な奴だ。人が何か些細な失敗をしたとき、やたらとぐたぐだ説教したり、しつこく文句を言う奴が こんな事を繰り返している内に俺は破産した。そして俺の家は銀行の差押えを食った。すると銀行の奴等 元はと言えば酒に溺れて博打のために、この家をも借金の肩に取られてしまった。ところで俺は気違い染み 雨は穴の開いた瓦を通り家中を濡らした。俺と智恵子と息子はただ黙って雨に濡れながら、その様子を魂 結局、俺達はこの土地から離れ東京郊外に引っ越した。新しい家は誠にみすぼらしい家であったが今の俺 俺は或る時、この化学工業社長の義弟で三井■■と言う人が俺の息子を可愛がって年がら年中、家に来て |
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