哀れなる魂 破の段 第5部 東京五輪の日に |
とする照れ笑いを俺は死んでも忘れない」と。するとその時、智恵子は口癖を繰り返した。「お父さんの家 働かないで家でぶらぶらしていても少しの蓄えは有ったが家計は苦しいに決まっている。だが俺は時に妙 俺は知っていた。息子が陰口を叩いて笑っている事を。しかし俺には、それに対して何も言え無かった。 その頃、俺は変な癖が習慣になった。家族がもう使えない汚いコップや衣類などの我慢すれば、なんとか 物を大切にする心からではない。俺は捨てられる塵と、もはや役に立たなくなった人間塵である自分自身 さらに俺は細かい不要品をきちんと新聞紙に包み梱包してさらに丁寧にビニールの紐で十字にゆわいてそ 俺は街をほっつき歩いていた。するとどこをどう歩いたのかは憶えていないが昔の俺の栄光を示すビルの そんな事を繰り返し疲れ果てて膝を着き昔、栄光を築いた会社の前、俺の建てた会社の前を見ると。男が |
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シューベルトの歌曲、影法師 | ||
「静寂の夜、街は眠っている。この家に私の恋人は住んで居た。彼女は、この町をすでに去ってい 俺は、自分では昔の栄光を忘れているつもりだった。しかし俺の影は片時も実はここを離れては生きては |
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そして俺はまた悪い癖が着いた。 たまに智恵子が働いて来た金で酒を飲んだ。そして飲み過ぎて胃を壊しをこわしげっそり痩せた。しかし、 |
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