哀れなる魂 破の段 第2部 或る無名戦士の記録 |
つまり下から2等兵、1等兵、上等兵、兵長、伍長、軍曹、曹長、準尉。次は尉官で少尉、中尉、大尉。次 そして軍隊の衣、食、住の衣の説明。下着は越中フンドシ、ズボン下、襦袢、上着は軍衣、ズボンは軍袴 次に食は食器は飯碗、汁碗、菜碗、湯碗、が在って全てアルミニューム製で箸は竹製。飯コーリャン飯、 そして最後に住で兵舎と言う。兵舎は縦に廊下が走り、その両側に部屋が在る。その1室に初年兵16名 その廊下からこの部屋を見ると柱が2本在って左右に銃を立て掛ける台が在る奥の窓の硝子はテープが×印 これが軍隊の住だ。 軍隊では俺があれ程好きだった本も読める筈は無かった。軍隊には内務令と言う本の 軍人勅諭は必ず憶えさせられた。軍隊手帳の初めに朱色の活字で印刷してある明治天皇の軍人への訓戒。 |
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軍隊の演習は基本的には中学の教練と同じだ。ただ1つ重大な違いは、ここが本当の戦場で在ると言う 事だ。子供の時に見た田川水泡の、のらくろ武勇談に書いてある戦場とは訳が違う。俺は、ここで色々な死 と非人間的扱いを、まざまざと見せ付けられる。 ここで嗜好品、煙草、酒の話をしよう。幾ら軍隊だって煙草と酒は支給される。親父は俺に光と言う煙草を 、幾らか持たせてくれた。俺はそれを直ぐ上官にやった。軍隊の煙草は誉れと言って、まずかった。下士官 は一般兵隊用とは違う煙草を吸っていたが光の方が美味しかったらしく喜んでいた。俺は中国で手に入るイ ギリスの煙草を吸っていた。酒は支給で俺は軍隊に入る頃は酒が大好物になっていた。しかし、この酒をき っかけとして俺は思い出に残る、私的制裁を受けた。古参兵が初年兵に行う私的制裁をである。 軍隊に入 ればリンチは日常茶飯事だ。どんなリンチか。例えば捧げつつ最初の2〜3分は銃をきちんと持って居られ るが10分〜15分と銃を持っていると、さすがに腕が下がって来る。ふざけやがって。すると、「コラー !」何て気合いを入れられる。次に自転車と言う奴、内務班の部屋の2つの寝台の間に立たせて両方の寝台 に手を着いて足を持ち上げる、丁度体操の平行棒の様な格好になる。自分の体重を両腕だけで支える。持ち 上げた足を漕ぐ様にしろ、と命令される。初めの1〜2分は良いが、終いにや顔が歪んで来るぜ。 次に蝉 、柱にしがみつかせて蝉の真似をさせやがる、ミーン、ミーン、ミーンそれを見て笑うんだ古参兵が。ふざ けんな!。次に鶯の谷渡り。寝台の下を潜り頭を上げてホーホケキョ、ふざけんなてんだ。もっと頭に来るのは軍隊 は女性は絶対に居ない社会だ。こう言う所に限って居るんだよ、例のホモちゃん |
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