1943年10月21日の青春⑳

哀れなる魂　　破の段　第１部　１９４３年１０月２１日の青春

	在ります！」と言うと、さすがのオイコラ警察の巡査も感心した様に「それは立派な心掛けだ頑張りたまえ」と言った。俺は内心は、この機械が日の目を見る日がやって来る事を疑わ無かった。　この国は、何て下らない事をする国だ日本は西欧にまだまだ学ばなければならない事が一杯、在るのに産業革命の生んだ悪い一面で在る帝国主義やスミスが唱えたえた分業生産に黙って従事する人間を最高とする教育制度それら下らない事ばかり西欧に学び自由、平等、博愛の思想を完全に抹殺した、この国家、その国家に何も堂々と悪口の言えない自分の細かだが精一杯のこれが抵抗だった。　そんな活動を朝から晩まで毎日続けた。夕暮れの帰りに大きな布をリヤカーに掛けタイプを隠した。もし、「あいつの家は敵制国語を打つ機械を集めている」と。こんな噂が立ったら全てが終わりだから。もしバレたら供出すれば良いだけの話だが、今までの苦労が水の泡になってしまうからだ。そして家の物置や空き部屋、■■の土蔵がタイプで一杯に成る昭和１８年頃俺は徴兵検査を受けた。………………………………… 　私は今まで聞いた話が余りに今の若者の生活と違うので驚いた。そして言った。「徴兵検査を受けたって言いましたが戦争へ行ったのですか？瀬古さんは学生なんでしょまさか学生は戦争へ行かないんでしょ」と聞いた。老人は　「では、それをこれから話そう大富豪婦人の事は、その内に嫌でも話す、少しはこの時代の話しを聞いてくれ」と言ってまた話し始めた。
	YouTube - death of Isoroku Yamamoto 山本五十六の死
	ああわれ何の面目かありて見えむ大君に将又(はたまた)逝きし戦友の父兄に告げむ言葉なし、いざまてしばし若人ら死出の名残の一戦を華々しくも戦いてやがてあと追うわれなるぞ。連合艦隊司令長官　山本五十六の言葉

	上の右はアッツ島玉砕　YouTube - 実録　硫黄島玉砕 (玉砕、玉が砕ける言葉は美しいのですが…)
	徴兵検査は今まで満２０歳だった。だが、段々戦局が不利になった昭和１８年は日本にとって悪いニュースが続く。２月１日ガダルカナル島撤退開始、４月１８日、山本連合艦隊指令長官、ソロモン上空で戦死、５月２９日、アッ島の日本守備隊玉砕。そんな中で今までは満２０歳で徴兵検査だったのが上記の戦局の不利の理由で１９歳に引き下げられた。俺は１９歳だった。　徴兵検査の場所は近所の小学校講堂、検査は素っ裸で身長、体重、視力を調べる。威張った衛生兵が俺達を整理して軍医が調べた。軍医は俺の顔見知りだった。そして俺に声を掛けた。「君のお父さんは日露戦争の時はどこを担当していた？」「はい砲兵です」「では体が大きいのだろうね」「はい」「君は体は砲兵だか中学の時、射撃は？」　「学校で１番でありました」「では歩兵だな頑張りたまえ」こんな会話をしたのを憶えている。　さらに検査は進み四つん這いにさせられ肛門の検査を、さらにＭ倹と言われる性病の検査も受ける。俺は放蕩をしたが幸、性病には成らなかった。しかし性病の若者もいた。その若者の事を軍医は憲兵に知らせると、この震える哀れな若者数名を、俺達の見ている前で憲兵は「この不忠物！」と罵り殴り付けたのであった。　結果はその日の内発表になった。査定は甲種から丙種まで、乙種は、第１乙、第２、第３に別れ、その下が丙、ここまでが合格、丁種でやっと不合格で相当の病人で無い限り必ず合格する。俺は甲種合格であった。　この頃の俺は、すっかり酒が病み付きに成っていた。その頃、酒や米まで配給に１７年２月１日には衣料まで切符制なのでなかなか手に入らないが俺の家は青果業だから酒屋に野菜を回し、タイプを集め終わった後は酒を飲んで、その合間に野菜の配達ツーリストの車の手入れ、とそんな仕事をしていた。
	YouTube - 中島　一式戦闘機「隼」 YouTube - 中島　二式単座戦闘機「鍾馗」

	この話を聞いた方はもう亡くなっているので立川飛行機とはどこだったのか全く解りません動画では中島と書いているので私が聞き間違いたのかもしれません。
	しかしどこでどう調べたのか、たいした仕事もしていない俺は立川飛行機と言う軍事工場へ昭和１９年１月にすでに軍隊へ入営が、決まっていたので、それまで立川飛行機で働けと命令された。　この頃、喫茶店でコーヒーを飲んでいてさえ不良狩りと言って警察に引っ張られる時代に逆らえる筈もなく俺は軍事工場で朝、未だ暗い内に家を出て働いた。立川飛行機では隼、鍾馗と言う戦闘機を作らされた。男ばかりではなく若い女性も１６年には女学校軍事教練が始まり女学生はセラー服にもんぺ姿であった。１８年９月２３日には販売店員、出改札、理容師など１７職種の男子就業禁止となり勤労動員させられた。　俺は立川飛行機で保険屋になった仲の良かった友達や普通の職業に着いた友達に幾人も出会ってびっくりした。
	勤労挺身隊

	下左は竹槍訓練をする女性、右は米軍が極秘に開発していたファイティング・マンラダ阿呆ロボット開発の情報を掴んだ大本営は女子竹槍訓練で是に備えた。１９４４年８月政府は閣議で「一億総武装」を決定、婦人会を中心に女性の竹槍訓練が始まった「竹槍では間に合わぬ飛行機だ」の記事を掲載した「毎日新聞」は発禁となり記者は徴兵されたが背景には米軍の秘密兵器開発の極秘情報を隠すための処置だった。(勿論嘘)時代錯誤ではこんな冗談を言って気を紛らわさなければ上の女の子達や毎日新聞の記者が可哀そうでやりきれない気持がします。非国民の俊介書く、非国民でたくさんだぜこんな軍部見たいな気違の豚どもめ

	女性も例えば智恵子も勤労挺身隊と言う名目で軍事工場へ働きに行く事になった。　そんな１８年１０月２日、瀬古が遊びに来た。この日、東条英機首相によって学生生徒の徴兵猶予全面停止になった東条内閣は先の１６年すでに在学年限を短縮していたが今度は兵役延期の特典が学生に無くなり文科系の学生だけ戦線に向かう事になったのだ。　瀬古は俺の部屋に入るなり座る間も無く直ぐに「１２月１日に入隊する」と一言、言った。俺は瀬古に「瀬古、醤油を飲め仮病を使って戦争には行くな俺は１９年１月の入隊だ、中国の最前線か南方だろう死ぬのは俺１人で沢山だ軍事工場で働いて日本の敗北は余り遠くないと思っている。物資が無くて生産が余り出来ないんだ」瀬古は「俺も薄々は、そう思っている、が米英が日本に上陸して東京で市街戦となり東京が焼けのが原に成るのを見たくない。

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